フルレンジのこと

気がつけば、家で使っているものも仕事場で使っているものも、スピーカーが全てフルレンジユニットになってしまっている。マルチウエイは地獄に堕ちて死ぬべきであるとか考えてるわけではないのだが。詳細は blog にて熟知すべし。メインが Lowther PM6A、サブが EV 405-8H、仕事場が norh 3.0 に Tang Band のキノコ、という感じで、ちなみに奥さんは nOrh 3.0 Prism を VH7PC のレシーバーで使っている。音質よりも、もともとのスピーカーより小さくて形が面白いところが気に入っているようだ。
もともとガキの頃家にあったのが CORAL のロクハンのユニットをちょっと立派な箱に入れたものだったり、中学生になって買ってもらったスピーカーがテクニクスの 10cm ユニットを小さな箱に入れたものだったりと、原体験にフルレンジが刷り込まれているというのもある。大学生になって JBL 4301B を買ってその音に感激したものだったが、いつの間にやら元の木阿弥だ。
オレがフルレンジを好むようになった理由は、三極管シングルのアンプを好むようになった理由と共通しているように思える。すなわち、相対的に単純な構成でもそこそこの音を出すことができる、ということだ。ちょっと上を目指そうとすると途端に泥沼に嵌まる点でも共通している。「音場」という概念をどう言葉で説明できるものなのかオレにはよく分からないのだが、三極管アンプもフルレンジユニットを使ったスピーカーも、バキバキの迫力よりは空間的イメージの描写に長けているのではないかと感じられる。はじめて Lowther から音を出した時、その緻密で充実した空間イメージに驚嘆したものである。それを生かした上でどのように高音の暴れを抑え低域を引き出すかが課題なのである。405-8H はもっとずっと簡単にバランスを取ることができるが、それにしても劣悪な条件で結構ちゃんとした音がしたりする。
もちろんよくできたマルチウエイであればフルレンジが抱えている問題をあらかじめ解決した上で優れた空間描写をしてくれるものも多いのだろうが、オレのように予算の上限がきわめて低く部屋にも恵まれない場合、能率のいいフルレンジはその条件下でそれなりに満足できる音を得る手段としては優れていると思う。アンプに出力を要求しない点でも、オレみたいに複雑なアンプを作れない駆け出しの自作派には向いている。ロト6のキャリーオーバーをぶち当てて豪邸を建てたりしたら、いきなり エベレスト DD66000 あたりを買ってしまうだろうことは目に見えているんだが、そんなことが起こり得ない以上、現状には結構満足していたりするのであることよ。