コンデンサのこと

前回のエントリで「電源を入れるたびに音が違うのは何故だろう」と書いたが、考えてみればスピーカーケーブルとか弐號機 300B シングルの段間のカプリング・コンデンサなどを変更したので、それらの継時変化によってどんどん音が変わってきているのではないかと思い当たった。初段とドライバの球だって NIB なのだから使っているうちに変化もするだろう。
で、スピーカーケーブルのことは書いたが、コンデンサについてはそういえば何も書いていなかったな。当初は初段とドライバ、ドライバと出力段の間はどちらも Dynamicap を使っていた。ずっと愛用しているコンデンサで、情報量が多く透明感が高い。しかし今回に限っては、なにしろスピーカーが気難しい奴なので、この straightforward であることを特徴とするコンデンサより、むしろ積極的に響きや音色を付加するスタイルのものの方が向いているのではないかと考えた。そこで初段とドライバの間には、以前使っていたのを取り外して部品箱で眠っていた Audio Note のものを使い、ドライバと出力段の間には Jensen を採用することとした。どちらもフィルムにオイルがしみ込ませてあるタイプである。
Audio Note はもともと日本の会社のはずなのだが、商標をイギリスの現地法人が買い取ったか何かで、コンデンサとか DAC などは日本の Audio Note とは基本的に無関係なんだそうである。たぶん故近藤氏の名声を借りた商売なのであろう。実際国内では売られていない。詳しいことはよく分からないが。銀箔を使った異常に高価なものもあるが、オレが使ったのは銅箔の中間グレードである。中身は Jensen と同じだという話もあるらしい。
一方 Jensen は言うまでもなく方々で採用されている有名なものである。かつては日本国内でもそれほど高くなかったようだが、今では相当なお値段である。これはやはり銅箔のバージョンを eBay で入手した。ここで使ったものの他にも別の容量のものを同時に購入したので、送料を等分すれば込み込みで日本での価格の6掛けくらいだろうか。それにしても、0.47uF という容量にしてなんという大きさであろうか。手持ちのコンデンサで比べてみても、Solen の 22uF のフィルムよりも大きい。あまりの巨大さに実装の際にかなり苦労した。写真を撮り忘れた。
昨日あたりからようやく音も落ち着いてきたようなので、やっと改めて評価する気になったわけであるが、当初のまるでローカットフィルタでも入っているように低音が出ない状況からはすっかり脱出することができた。高域の繊細さというか情報量についてはやや抑制された感もあるが、キンキンする、耳につく成分は相当部分排除することができたのではないか。ヴォリュームのあるしっかりした低音に支えられた、全体として厚みのある音になったように思う。
色んなことをやったので何がどのように出音に影響を与えているかは腑分けできない。ただ言えることは、たとえばCloud About Mercury なんかを聴くと、フリッパトロニクスを彷彿とさせるスペイシーな音の波と、トニー・レヴィンおよびビル・ブラフォードのリズムとがきっちり噛み合った音楽を堪能できるということである。