SV572-160

いまいち気に入らないところが多くて放置気味だった 808/ 811A シングルだが、このまま放置しておくのももったいないと考えていたところ、Svetlana の SV572-160 が安く売られていたのでペアで買ってみた。邦貨換算6000円ほど。
データシートを見ると、ややグリッドがマイナスの領域が広いものの、ほぼ 811A と同じように使えそうだ。形には面白みはないが、プレートがてっぺんに出ていないので安全だし、プレート損失も大きいので余裕を持って使えそうな所がいい。この際なので回路も見直してみる。

ポイントはドライバに 6BX7 をパラで使ったところ。ドライバの出力インピーダンスは低いほうがいいわけだが、カソードフォロワのインピーダンスは球の gm によって決まる。今までの EL34 三結に対して、6BX7 をパラで使うと gm が倍以上になるのでインピーダンスは半分以下ということになる。電圧と電流の辻褄もあう。で、完成した姿。


何故か初段の 717A が一つ死んだので慌てて手持ちの 713A に差し替えたが他にトラブルはなし。出力は 10W ほどで、カソードチョークドライブにすればもう少し出そうだが特に不足はない。高域が 25kHz からストンと落ちるのは出力トランスのせい。ホントはもっといいトランスを使いたいんだが、大型のシングル用トランスは選択肢が少なくて高い。聴感上は悪くないのが不思議だ。ただ、前からそうなのだがハムが減らせず、2.5mV くらいある。大電流シングルは難しい。電源のチョークを大きくしたりフィルタを増やしたりする必要はありそうだが、そうなるとシャーシのレイアウトから考えなおさなければならない点が増えて大仕事になってしまう。とりあえずリスニングポイントまではハムは聞こえないのでこのままいくことにする。
音質的には、811Aほど高域寄りにならずバランスがいい自然な音だ。まだ球のエージング段階だが、これは相当素性がよさそうだ。低出力域の歪みが明らかに小さいのは歪の打ち消しが働いているのだろうし、SV572-160 自体の直線性もよいのだろう。この球の低μ版である SV572-3 や SV572-10 は今やほとんど手に入らず、あっても非常に高価になってしまうが、SV572-160 は安価で入手性もいい。お勧めである。