809 交換

先日でっちあげた弐號機(改)809 シングルだが、809 がダメ球でハムが出る話は書いた。そこで新しい球を入手する。今度は同じ RCA でも少し古いロットらしく、ブラックプレートでベースの色がより茶色い。整流管と色が同じで見た目もいい。
フィラメントをしばらくエージングした後おもむろに音を出してみた。今度はノイズも全くなく、測定上 gm がほぼ揃っているペアでもあるからゲインの違いもなく安定している。音質についてだが、素晴らしいね。レンジがすかっと広く、かつ厚みもある。今までどのアンプでも何となく感じていた頭打ちがまるでなく、パワーもするすると出ている感覚がある。ちょっと今までに経験したことがない音だ。オレって天才かも、と思ったりもするが(笑)、要するにポジティブグリッドの送信管をダイナミックカップルでドライブするという昔ながらの回路が優れているわけだ。
こういうのを自分で作って聴いてしまうと、所謂名球って何なんだろうと思ってしまう。モースを俟つまでもなく、価値は価値の体系において交換によって創出されるものだから、価値と実質とは関係がない。市場において注目される球はそれが孕んでいる物語の故であってそれ以上のものではない。オレが変な球を好きなのは、その容姿や本来の用途に別の物語を見出しているからで、さらに一般的にオーディオ用途には使いにくい電圧や特性をなんとかして使えるようにすることにパズル的面白さもあるし、なにより人と同じものが好きではないという思春期的メンタリティの所為でもある。その点、宍戸氏が変わった送信管のアンプをたくさん作ったことは、少なくとも日本における価値の相対化に一役買っているといえよう。
これ以外に 808 もあるし、WE316A や 8025 も入手したので、回路を考えるところから初めてしばらくは楽しめそうだ。