WE755A

さて、サンバレーの試聴会であった。オレ自身が近い将来においてキットを購入する予定がないこと、試聴会で使用される Stirling も ALTEC もあまり好きなスピーカーではないこともあって正直あまりよく分からなかったが、トランスドライブの845 シングルと新作の 300Bpp はなかなかよかった。特に 300Bpp は現実的な価格でもあって、かなり魅力的なアンプだと思う。少なくともオレにとっては、他のアンプと比べて、analyticity と musicality のバランスがよく取れた音に聞こえた。特に低音の分解能と中域以上の空間的描写が両立している点がよろしいのではないか。

そして試聴会の夜はサンバレー友の会である。場を提供してくださった小林さんのオフィスは広い空間に A5 はじめ名機が並び、ご本人もきわめて気持ちのいい紳士で、オレもこういう立派な大人になりたいと思ったが、特にびっくりしたのは WE755A の入った小さなスピーカーシステムである。まるでサイズとは無関係な深く豊かな音色に完全にノックアウトされてしまった。もちろん C22-MC60 という再生系の力も大きいのだろうけれど、まさに究極の8インチフルレンジである。なるほどとんでもない価格で取引されているにもかかわらず血眼で求める人が多いのにも納得してしまう魔力がある。オレがもしこれを何かの間違いで手に入れてしまったら、その時点でオーディオ遍歴は終了となろう。今の Lowther も気に入っているけれど、全く違う方向性でなおかつ圧倒的な力を有する。こればっかりはもうどうにもならない。しかし考えてみれば8インチフルレンジとしては物凄い価格だけれど、現代ハイエンドスピーカーよりははるかに安価でもある。ある究極がその価格なら安いという考え方もあろう。
というわけで、これを聴けただけでお伺いした価値があったというもの。人生における目標を得た感じである。