ショールーム

というわけで、サンバレーのショールームに行ってきましたよ。結構長いこと親しくお付き合いいただいてるが、先方へ伺うのは初めてである。どういうことをしてたかは大橋さんの日記をご参照いただくとして、持っていった音源は、愛聴盤の中で普通あんまり試聴に持って行かなそうなものということで、ペルト、ラウタヴァーラ、バカロフ、武満、それからマリリオンといったところ。大橋さんはバカロフの『ミサ・タンゴ』を気に入られたようである。なにしろダイナミックレンジの広い曲で、システムチェックには持って来いである。
聴かせていただいたアンプは SV-38T, 63, 91B の三機種。前段は CEC TL-51X→Softon Model2→SV-310。オレの目標としてはいつか SV-63 を欲しいと思っているのでこれを特に楽しみにしていた。とにかく低音がもりもり出てスケールが大きい。ぱっと音が離れる感じ。同時に独特の透明感があって、6C33 について屡々いわれるような荒さはまるで感じられなかった。とにかくでかいけどね。38T はぐっときりっとした感じで、音場が内側に収束する傾向 (あくまで傾向であって、広がりのない音場というわけではない)。ペルトや武満のような内省的な音楽にはこっちの方が合うかも。出力管はオレが使っているのと同じメタルプレートの 845 だが、それもあってかかなり濃密な感じだった。91B は特徴のはっきりした前二者と比べるとずっと普通の音で、なんでも過不足なくこなすタイプだな。さすがにパワフルな前二者との勝負だと頭打ちになっちゃうような感じを受けたが、音色自体は一番好きかもしれない。とまれ総合的には、この三つの中だとやっぱり一番個性の強い 63 が好きだなあ。特に厳し目の音のスピーカーにはよく合うんじゃないかと。
全く個人的な感想だが、300B シングルって難しいアンプだと思うんだよね。規格の厳しい球なのである程度のアンプを作ろうと思うと相当の物量が必要で、必然的に高価になりがち。WE だと球自体もえらい額だしね。そうなると裕福な人が買ってでかいスピーカーで鳴らすことになるけど、でかいスピーカーって能率が良くても少ないパワーでは鳴らし切れない場合も多いわけで、もちろん高級小型ブックシェルフのように能率が低くウーファーが重いとやっぱりうまくいかなかったりして、そうなると 300B シングルってどこで使うんだろうってことになっちゃう。物凄く裕福な人のマルチの中高域なんてのが一番いいところなんだろう。
あとちょっと興味を引かれたのが、大橋さんとこの製品でもないし音も聴けなかったのだが、たしかイギリスの名前も聞いたことのないメーカーの巨大なアンプ。いかにも高級そうなウッドフレームで、ほぼ正方形で一辺がたぶん60cmくらいある。KT88 4パラ PP のモノブロック(つまり片チャンネルあたり KT88 が8本!)で 100W だという。定価は280万だそうだが(!)相当お安くなるらしいので、場所があってでかいアンプが欲しい人は大橋さんにメールだ。
スピーカーは現行 A7 と Stirling。A7 は以前試聴会で聴いた 620 モニタよりはよかったけど、Stirling と比べるとまるで世界が違う。ALTEC ってこれでなきゃダメだって感じではまらない限り、Hifi 用途にはなりにくいと思うよ。少なくともオレは縁なき衆生である。
大橋さんも書かれていた DAC については、オレも以前 Model2 は持っていて、オレのところではどうにも焦点のはっきりしない音で気に入らず手放してしまったのだが、こちらでは普通にいい音で鳴っていた。オレみたいな臍曲りが、dAck! のようなアクの強い音を好むというだけの話である。ある程度エッジの効いたゾリゾリした音が好きなんだよねえ。
でまあ要するに、6C33 はやっぱりいいなあという身も蓋もない結論である (笑)。大橋さんもおっしゃっていたけれど、あの球が安いのは単にソ連の崩壊で軍用品が大量に市場に流出した所為でモノがだぶついてるからだけであって、モノ自体はとんでもなく手間とコストがかかっている。昔ジャン平賀がつけていたとんでもない値段の方が適正価格なのかもしれぬ。