Wyred 4 Sound DAC-1 LE

先日の DSD 実験で、DSD 音源の可能性を感じ、改めて DSD をメインシステムで鳴らす手立てを考えた。現用 DAC であるところの Burson Audio DA160 は、音は気に入っているものの 24/96 の PCM しか受け付けない。世代が古いから仕方ない。考えうる方法は二つで、 DSD DAC を搭載している SACD プレーヤを買うか、SACD は現用の Pioneer PD-D9 のままとして単体の DSD DAC を用意するかである。どちらにしても高価なものが多く、前者で言えばなんとか買えそうなのは Marantz SA-14S1 くらいであるが、どうにもデザインが受け付けない。後者でいうとまず思いつくのが Audio-GD NFB-1 なのだが、このメーカーはモデル更新が異常に速く、どうもやっつけで仕事をしている印象を受けるのと、以前 WM8401 でトラブルを起こした前歴もあって、高額製品の導入には二の足を踏んでしまう。
なのでいろいろ調べているうちに、ES9018 を使いつつ比較的安価な製品として、表題の Wyred 4 Sound DAC-1 LE が見つかった。アナログ段がオペアンプではなくディスクリートで FET を使った差動であるなどと謳っているのもいい。元々は 24/96 のみ受け付ける PCM 音源用の製品なのだが、上位機種の USB まわりを移植して DSD を扱えるようにしたものらしい。元となる DAC-1 の評判も良さそうだし、これを購入することに決めた。メーカーに問い合わせると 100V での動作も保証するというし(届いてみたら 85V~124Vが動作範囲であるらしい)。早速注文したところが、アメリカから4日で届いてびっくりした。なおオプションの femto グレードのクロックも搭載している。
ラックのスペースに余裕がないので当座 SACD プレーヤの上に置くことにしたが、もともとゴム足がついていたりしてその辺はあまり気を使っていないようだ。筺体の立派さ自体は DA160 の方が上だが、これも安っぽくはない。

フィルタの設定などもいじれるようではあるがここではデフォルトのまま暫く使うことにする。その他接続や設定に戸惑う要素はない。早速手持ちの DSD 音源を Audirvana Plus で再生してみると、音が硬え!DA160 が比較的柔らかめな音だったこともあって、これにはちょっと驚いた。尤も、メーカーが言うにはバーンインに200時間かかるとかであり、当初は多少 harshな音であるという。しばらく使っているうちに、こっちの耳が慣れたせいもあろう、音がほぐれたように感じられてきた。分離が良くて帯域の誇張もない。なんというか、きわめて透明な水の中の音を聴いているような雑味のなさが印象的だ。ES9018 というのは極めて Hi-Fi なチップなのだという一般的な評価だが、さもありなん。現状ではまだスネアのアタック音が強調されているように感じられるところもあって、この辺が時間とともにどうこなれてくるかを改めて評価すべきではあろう。しかし、かように先端的なデジタル技術によって造られた製品を自作の球アンプにつないで挙句に大昔の JBL のユニットで鳴らしているのだから我ながらよくわからないことをしている。

DSD 実験

サブで気持よく使っている TEAC UD-301 だが、メインでも DSD 音源を鳴らしてみようとメインシステムにつないでみた。Mac のあるデスクからオーディオラックまでちょっと距離があるので長い USB ケーブルを買ってくる必要があった。CDP とは同軸ケーブルでつないで両方から音が出るようにして、CD と DSD 音源の両方を持っているアルバムを聴き比べてみたのである。
ずいぶんと音が違うので驚いた。DSD の音は一聴しておとなしくマイルドに感じる。逆に言えば CD は明らかにエッジを立てたミックスをしているようにも思う。このアルバムに固有の問題かもしれないが、どうも DSD 音源全般にそういう傾向を感じる。DSD がより録音直後のミックスダウンに近いとすれば、元のマスターを CD/DA に落としこむ時点でそのような変化が生じているといえるかもしれない。
ただ、UD-301 は普段メインで使っている Burson DA-160 に比べるとエッジが立っている傾向も感じるから、たとえばアナログ回路をディスクリートで組んででかい電源を積んでるようなタイプの DSD DAC を使うとまた違うかもしれない。でも、いろんな音源を聴いてみた感じでは、より自然に聴こえるのはDSDの方かなあとも思ったり。PCM のハイレゾ音源と CD を比較検討する必要もありそうだ。

返品

残念ながら、Sonneteer Brontē SACD Player は返品することとなった。購入して2ヶ月で一切の操作を受け付けないトラブルが発生し、修理に出したら1ヶ月かかって漸く戻ってきて、その後1ヶ月半でまた同様のトラブルが発生したという。ちょっと使い続ける気力を失って、ダメ元で購入店に返品できないかと問い合わせたら、さすがにひどいので受け付けてくれるというので返品処理と相成った。
音は良かったしデザインも好みだったのだが、まともに使えないのではしょうがない。もうメカモノで洋物は買わん。
というわけでお金も戻ってくるので国産でなにかいいものがないかとちょっと物色してみたのだが、現実的な価格帯でピンとくるものがない。しかたないので、SACD の読み取りが怪しいので使うのをやめたパイオニアの PD-D9 を修理に出してつなぎにしようと考えてパイオニアに修理見積もりを出し、現在返事待ち。どうせなら DSD ディスクが聞けるといいと思ったのだが、10万円台までで買えて DSD ディスクを読める SACD プレーヤーって、それこそパイオニアPD-70 くらいしかなくて、これを買うんなら PD-D9 でいいやっていうところである。OPPO が映像関連の機能を一切持たない機種を発売したりしたら面白いんだけどなあ。あれ DAC チップが ES9018 だし。

TEAC UD-301

デスクトップ用の DAC は今までもいくつも使ってきたが、どうにも帯に短し襷に長し、という製品が多く、今ひとつ「これを使っていこう」と思えるものがなかった。基本的に要求することは、横幅が30cm未満であること、いくつかのデジタル入力を簡単に切り替えられること、アナログアウトのボリュームがついていること、ACアダプタ電源ではないこと(要するに一般的な着脱式電源ケーブルであること)くらいで、その程度なら条件にかなったものはいくらでもある。したがって選択肢が多すぎてなかなか決まらないという状況だったわけだ。iFI の mini iDSD が気になっていたのだが、いつになっても発売される気配がなく、縦令発売されたとしても値段が高そうで無理臭い。
そこで、ボーナスの一部を回してもそれほど懐が傷まなそうな価格帯で考えついたのが TEACUD-301 という機種である。上記の条件をすべて備え、かつ DSD にも対応している。できれば ES9018 を使っているものが欲しい気もするが、この価格帯では厳しそうだし、TEAC というメーカーにはなんとなく信頼感がある。なので買って試してみようというわけである。
なにしろ amazon で買ったので頼んだその日に届いた。早速設置してみる。

まあなんとも適当な設置状況ではあるのだが、音を出して驚いた。まず WAV ファイルを 176.4kHz にアップサンプリングして聴いてみたら、情報量はとても多くてサウンドステージも広いのに違和感がない。これはとてもいい音だ。DSD ファイルになるとむしろ音がややおとなしい傾向もあるようで、このへんは DSD 再生の仕組み上元々の録音の音がそのまんま出てくるからだろう。また、これだけいいならメインのシステムでも聴いみようかとも思ったのだが、同じファイルを USB 接続と同軸接続を切り替えながら聴いてみたら USB の方が明らかに上で、これは切り替えは可能ではあるが事実上 USB DAC として使えということだと理解した。どっちみち DSD は USB でしか使えないわけだし。
ともあれ、この価格帯でこの音がするのであるから、デジタル技術の進歩というものなのだろうねえ。しばらくデスクトップ DAC の旅はお休みできそうだ。

JBL 2402

前記事のコメント欄のやりとりから、畏友 ruri2cat 氏から JBL 2402 を借りられることになった。言うまでもなく 2402 とは 075 の PA 用バージョンであり、D130 系との組み合わせとしては鉄板である。俺の D123 との相性も悪いわけはなく、山水の箱に D123+075+N2400 などといった組み合わせを愛用していた/いる人も多かろう。一度聴いてみたいと以前から思っていたので申し出に飛びついた。ちなみに、この個体は帝劇で使われていたものだそうで、それこそ美空ひばりの歌声なんぞを拡声していたことになる。そのくらいの年代のものだから、初期型のアルニコマグネットのモデルである。
現状では SACDP を修理に出しているので、以前使っていたパイオニアの PD-D9 を引っ張りだして使っているところで、アナログと旧プレーヤによる再生である。2402 は下は 2.5kHz くらいから繋げられるということなので、クロスはまったくそのまま 6uF のフィルムコンによる 3.3kHz であり、アッテネータでレベルを調整する。大雑把にバランスが取れたところで聴いてみると、予想外に素直でむしろ柔らかい音である。音の芯はもちろんかっちりしているのだが、むしろ透明感というか音の見通しに寄与するところが大きい。高域のレンジそのものは決して広くないはずなのだが。たぶん、現用の Beyma のツイータに比べて下の方の音域がきれいによく出ていて、そのあたりがそういう感覚につながっているのであろう。Beyma との組み合わせよりもモダンな音かも?ともあれとても気に入った。借り物だからそう遠くないうちに返さなければならないので、自前で買っちゃおうかなあ。ちょっと検索してみたら、決して買えない値段ではない。075 との違いも気になるが、075 になると一気に高価になってちょっと手が出ない。

フォノイコライザ

基本的に俺が聴く音楽の7割位は70年代後半から近年のパンク、ポストパンク、ニューウエイブ、アルタナティブなどとくくられるジャンルであり、それから派生してサイケやノイズやプログレや現代音楽が混ざる感じで(アニソンのたぐいが音楽にカウントできるかはまた別問題)、正直オーディオ的にどうこういうものではないことがほとんどである。ただ、広い意味でのロックはやっぱりそれなりに大きな音で聴きたいものであり、ある程度の迫力を破綻せずに得ようと思うと一定の機械は必要になるというのが俺がオーディオに金や手間暇を投入している理由でもある。
という前提で、その手の音楽はアナログで聴いたほうが聴きたい音がする場合が多くて、手に入るなら音源はアナログがいい。俺のアナログシステムは、トーレンスの TD-318MKIII という、20年ほど前15万円くらいしたらしいターンテーブル(もちろん中古で買ったので安かった)に、ダイナベクターのMCカートリッジ、自作のフォノイコライザ(6BR7 という五極管を使った CR 型)という組み合わせであり、それでほとんど不満なく聴ける。ただ、最近自作のフォノイコライザの音が、もしかしたら変な音を勝手に気に入っているだけなのではないかという不安が出てきて、ちょっと感覚をリセットしてみようと市販のフォノイコライザを試してみることにした。高価なものは買えないので、安価なものの中でまあまあ評判がいいものを探していたら、Musical Fidelity の V-LPS という機種の中古を安く見つけたので買ってみた。おそらく並行輸入モノらしいがユニバーサルの AC アダプタが付いているので電圧の問題はない。この機種はサム・テリグが「これに勝ちたいなら最低1000ドルクラスのを持ってこい」と評価したもので、値段の割に音がいいらしいので試してみようと。
それで早速自作のフォノイコライザといくつかの条件で比較してみた。比較に使った音源は Lou Reed の Berlin Live である。まず V-LPS 単独の MC ポジションで聴いてみる。ハムノイズがかなり大きく、音もなんだか中心に固まっている感じで分離が悪い。サーフェスノイズが大きく感じられるのもマイナス。ただレンジは広く、低域の迫力も高域の伸びもかなりのものだ。
次に自作機でも使っている Webster の WSM-161 というマイクトランスを昇圧トランスとして、V-LPS の MM ポジションで聴いてみる。今度は特に低域が弱くなるが、内蔵 MC ヘッドアンプよりは全体のバランスが良くなって聴きやすいし、ハムノイズが劇的に減った。これなら十分に実用に耐える。
そして自作機に戻すと、ノイズは一つ前の組み合わせより少しだけ増えるが、低域の迫力が戻って、音場がぐっと大きくなる。日頃聴いている音で慣れているにしても、V-LPS より「いい音」であるし、ノイズも比較して大きいということはない。一番気になっていたのは、高域のレンジが狭いのをいいと感じているだけなのではないかという点だったのだが、V-LPS と比較して特に高域が出ていないようには聴こえなかったのでよしとする。というわけでつまらない結論になったが、自作機は安価な市販機よりは実力があると思えたので安心してこれを使い続けることにしよう。たぶんこれよりいいと感じられるものとなると、30万クラスの真空管を使ったものになるのだろうし、そんなものは全く現実的ではない。
というわけで「俺様天才!」という自画自賛記事になってしまったが、真空管とトランスには何らかのマジックがあるのだろう。楽器の再生や録音に用いられる機材にはいまでもトランスや真空管が乱立していることがちょくちょくあって、そんな過去の遺物をわざわざ使ってしかもテープで録音したりなんてことが珍しくないのだから、俺の感覚がひどく特殊であるということもないのだろう。特殊だったとして、俺が気持ちよければなんだっていいとは言えるんだけど、そういうことが気になるところが小心者の所以である。

Brontë 続き

購入した Brontë SACD Player であるが、しばらく使っているうちにどんどん良くなってきた。元々のシステムがワイドレンジじゃないから、楽器の音や人の声がどれほど俺にとってリアルに聞こえるかがポイントなのであって、そういう目的にはかなり合致しているように思える。当初高音よりに感じられたが、なかなか低音もがっしりと充実している。こうなると通常の CD を聴く際に今まで使っていた DAC よりもこのプレーヤーのほうが音がいい。ツボを抑えてる感じ。

もちろんハイエンドとは違う世界であって凄いものがたくさん世の中にあるだろうことは理解しているが、俺にとっては高価な買い物だったし、それが気に入ったというのは幸せなことである。

なおキモである Philips のメカだが、予想通り(代理店も言っている通り、でもある)読み込みは遅い。SACD を読み込むまでには10秒位かかる。それでも SACD から CD-R まで、読めなかったディスクは今のところないので必要な信頼性は確保されているといえよう。PD-D9 みたいに5年使えればいいと考えて、5年後にはおそらく SACD なんて絶滅してるだろうから、その時どうすればいいかを考えればいいか。この歳になるとそれまで生きてるかどうかもわからないし(笑)