815PP

ここのところ、既存のアンプの改造も含めて割と真面目なアンプ作りが続いていたので、久々にスクラッチで見た目優先のものを作ってみようと思い立った。そこで選んだ球が 815。ツインビームの送信管で、832A や 829B と同じカテゴリである。見た目の面白さからかそこそこ作例がある。
で、こいつをこれといった工夫もない普通のプッシュプルで動かそうとして設計した回路がこういう感じ。

スクリーン電圧の制約があるので、ここをツェナーダイオードで固定した他、計測結果でピークが大きかったのと超高域がやや不安定だったので初段に積分補正を入れた。これをすると初段の大きすぎるゲインがある程度抑えられてちょうどいい塩梅になる。位相反転は出力管のバイアスが浅いのでPK分割で簡潔に済ませた。しかし 6AN8 が便利すぎて大抵の初段をこいつで済ませる傾向があるなあ。また、OPT はハモンドの 1635 という古い設計のもので、あまり大きな負帰還はかけたくない一方で、不平衡に強いという特徴がある。そこで出力段のバイアス調整機構は省略した。カソードが2ユニット共通で調整が難しいというのが大きいけど。
で、できたのがこちら。ギターアンプ用の大きなジェムをパイロットランプに使ったのがアクセント。

で、今回はボンネットのあるシャーシを使って、ボンネットも見た目要素として活用する。

本当はシャーシもサビ塗装にしようと思ったがうまくいかなかったのでシャーシはハンマートーン塗装にした。ボンネットには歯車や工具などの真鍮のパーツを配してスチームパンク風味にしてみた。
出力は 9W で頭打ちになる。多極管ネイティブらしくハードクリップである。もうちょっといくかと思ったんだけどなあ。12dB の負帰還をかけて仕上がりゲインが 26dB と想定したとおりになった。補正の結果 20Hz から 70kHz はほぼフラットで、上はそこからなだらかに落ちるようにできたが、20Hz 未満の超低域がこれまたやや不安定である。カップリングコンデンサを小さくするなどして低域を切ったほうがいいかもしれない。
音質的には、高音にちょっとアクセントが乗った、昔の球アンプってこういう音だったよねという懐かしい感じ。特にダイナコあたりを彷彿とさせるものがある。これも狙い通り。まだ調整の余地はあるが、なかなか可愛いのができたのではないかと思っている。