112A ヘッドフォンアンプ

ふと魔がさして112A を買ってしまったのである。一度こういうナスの古典球を使ってみたかったのだが、112A なんて頑張ってもろくに出力も取れないしどうしようと考えて、ヘッドフォンアンプなら出力いらないじゃん!というわけで、112A を出力段に用いたヘッドフォンアンプを作ってみた。家には受験生もいてなかなか大きな音で音楽を聴けないし、Audio-GD の NFB-12 のヘッドフォン出力の音をいまいちだと感じていたこともある。
なにしろ 112A の内部抵抗が高目なので負荷抵抗もそれなりに大きくしなければならない。μも決して大きくはない。バイアスは浅いからドライブは大変ではないが、Ep が低いので前段にも工夫が必要になる。色々考えて、五極管→カソードフォロア→出力段という構成で全段直結にして電源電圧を嵩上げする。ヘッドフォンは AKG K701 が32Ωという低インピーダンスなので、これ専用ということにして、7k:16オームのトランスを使えば実質14k負荷ということになるからちょうどよさそうだ。ヘッドフォンで聴くことを考えるとノイズ対策も慎重に行う必要もある。
ということで完成した回路はこちら。

トランス類は全部春日で、電源トランスはフィラメント用のタップを独立してもたなければならないため特注。OPT は KA-54B57T。小型トランスの中では特性が素直だと評判だから使ってみた。どうせ7mAくらいしか流さないのでOPTにとっては楽な条件だろう。初段は 6BL8 の高信頼管 E80CF、整流管は小さな傍熱管ならなんでもいいんだが手持ちの 84 が ST 管でスタイルがいいので採用。出力段は Ep=150V、Ip=7mAあたりを目安にする。フィラメントはロードロップの三端子レギュレータを使って安定化、前段もDC点火にする。シャーシが小さい割に部品点数が多くなってなかなか大変だった。んで完成形がこんな感じ。

出力はノンクリップで 0.2Wくらい。ノイズはほぼ測定不能で、実際ヘッドフォンを介しても何も聞こえない。ゲインは10dBのNFBをかけた上で23dBくらいで使いやすいところ。50kHzあたりにピークがあるので微分補正として 1300pFのコンデンサを追加した。このコンデンサはもう少し大きくてもいいかもしれない。
音質はさすがに NFB-12 のヘッドフォン出力とは格が違って、バランスが良くて広がりのあるさわやかな音。直熱三極管の面目躍如か。これでヘッドフォンで音楽を聴くのが楽しくなった。